日本医療秘書実務学会第4回全国大会 基調講演および研究発表概要一覧

【基調講演】

済生会熊本病院 副院長 町田 二郎 先生

「急性期病院における医療秘書の価値創造」

 【研究発表】

敬称略(名前の前の○印は、主発表者)

1 ○岡野大輔(金城大学情報メディアセンター)医療秘書に求められる法律知識とは ~「医療秘書法務」概念構築への試論~

医療秘書が法的スキルを修得することは、クレーム対応など接遇スキル向上のみならず、専門職としての地位の確立や、医療秘書職の職能の明確化にも資するものと考えられる。医療秘書の養成課程における法学教育のあり方と、実務上想定される具体的事例の検討を踏まえた「医療秘書法務」概念構築に向けて、医療秘書に求められる法律知識について考察を行う。

2 ○笹瀬佐代子(岡崎女子短期大学)医療機関の事務職を目指す学生の職業観

医療機関の事務職は、学生にとって人気の職業である。目指す学生は、その職業に強い憧れを抱き、医療秘書等の検定合格に向かって努力する傾向がある。しかし医療機関の実務では、学生が考えている医療機関の事務職の仕事とは差があり、職業に就いてから意識のギャップを感じることがある。医療機関の事務職を目指す学生の職業観の調査から、医療関係の事務職志望が形成される過程、性格との関連を、非志望者との比較で考察を行う。

3 ○齋藤春奈(坂の上野田村太志クリニック)他 電子カルテを使用した診療情報提供書作成補助業務の取り組み~より完成度の高い紹介状を効率よく作成するために~

当院は医師1名の無床診療所で1日平均110名超の外来患者を診療している。循環器・呼吸器等重症急患もしばしば来院するため診療中に紹介状が必要になることも多い。その際、外来が中断して予約診療に支障が出ないようにスタッフが紹介状の下書きを行い、医師が仕上げる方式をとっている。最近では頻度の高い紹介状パターンを電子カルテにひな形とし保存し、それを元に事務初心者でも比較的完成度の高い紹介状を短時間で作成しており、その診療補助効果を分析し紹介する。

4 ○山本英樹(医療法人社団善仁会小山記念病院) 新任医師事務作業補助者への教育及び業務拡大について 

当院は医師事務作業補助室を立ち上げて4年目となり昨年より開始した新任医師事務作業補助者への教育も本年で2年目となる。当院では、外来診療補助部門、入院診療補助部門、文書作成補助部門・医療秘書部門と医師事務作業補助者の業務を3部門に分け展開しているが、今回、各部門での教育及び業務拡大に向けての課題並びに成果。当院医師事務作業補助室の現状について発表する。

5 ○堀初子(関西女子短期大学医療秘書学科)他 関西女子短期大学医療秘書コース学生の就職活動と課題 -求人票からみた早期退職の要因-

本コースの就職率は例年高く、平成24年3月卒業生は就職率100%であった。しかし、近年採用内定後1~2か月以内に辞める学生が多くなってきている。また、全学で本年度から実施している事業主へのアンケート調査の結果からも、芳しい評価はあまり得られなかった。就職活動の指導は主にゼミ教員が行っているが、求人票の記載事項や22年度生に実施したアンケート調査の結果から、早期離職者の減少を目的として就職指導の改善を図る。

6 ○池永雅子(医療法人友和会鶴田整形外科医療情報部)他     当診療所における研究支援業務の新たな取り組みと医療秘書の可能性

当院は一診療所ではあるが活発な学術活動を特色としており、医療秘書2名による医療情報部は研究支援を行う専門職として研究の立案から論文の受理までを支援することを業務の一つとし、特に医師(4名)に対しては倫理委員会への申請書作成からデータの収集と解析、抄録や発表スライド、論文の作成など全て代行してきた。そして2013年、新たな取り組みとして医療情報部に学術専任の理学療法士1名が配属された。今回は当院の新たな研究支援体制を紹介し、医療秘書の可能性について若干の私見を述べたい。

7 ○小林利彦(浜松医科大学医学部附属病院医療福祉支援センター) 静岡県内の医師事務作業補助者の現況と課題

静岡県内で一般病床を有する75病院に医師事務作業補助者の実態に関するアンケート調査を行った。回答があった55施設の中で医師事務作業補助者は45施設(82%)に居り、医師事務補助者の呼称18施設(37%)、医事課所属31施設(69%)、25対1:11施設(24%)、診断書作成の実施42施設(93%)、無資格者採用(73%)、医師の教育担当10施設(22%)、キャリアプランなし38施設(84%)という結果であった。

8 ○内山伊知郎(同志社大学心理学部)他 医療実務者支援のための院内保育向上の試み -RICシステムを用いて-

パワフルケアが行っている病院内の医療従事者用の保育は、病院の活動に対応した24時間体制の業務である。利用者は医療従事者であるが、医療業務に専念できるよう安心できる保育を行うスタッフが必要となる。ここでは、RICシステムを用いて、保育に対するスキルとモチベーションの向上を図っている。今回は、RICシステムの紹介とそれを一定期間続けた時の保育に対する意欲の向上をアンケート調査で検討した内容を報告する。

9 ○河原秀明(医療法人創和会しげい病院医療推進課)他 医事課・医療推進課の実習生受入れの取り組みと現状報告

当院では医療事務を中心とした実務業務を学んでいただくため、岡山県内を中心に医療福祉系の大学、専門学校から教育実習生を積極的に受入れている。総合受付及び外来受付業務、病棟クラーク、人工透析センター、総合リハビリテーションセンターのクラーク業務、また診療報酬請求関連や、カルテ管理を中心とした診療情報管理等、過去3年間の実績と具体的教育内容にて報告する。

10 ○蜂谷慶子(十全総合病院企画支援課) 当院における医師事務作業補助者導入の取り組みと課題

医師事務作業補助体制加算が新設されたのを機に、当院でも医師事務作業補助者(クラーク)を徐々に増員し勤務医の負担軽減へと取り組んでいる。現在の支援状況と評価、今度の課題について検討した。中でも、当院のクラークはすべて女性であり、人生の節目における退職、休暇取得などの可能性が常にあること、そのこともふまえた有効なローテーションの組み方が課題となっている。現在のクラーク配置・ローテーションについての取り組みについても報告する。

11 ○西川三恵子(名古屋経営短期大学)他 医療事務者に求められるマナーとホスピタリティ

昨今の社会問題の中に早期離職や雇用のミスマッチという言葉をよく耳にし、社会経験や現場の仕事の理解力が不足したまま就職活動をしている学生も少なくない。本発表は医療事務者に関する検定試験問題を検証し、現場で求められるマナーやホスピタリティについて考えるとともに、本学で開講している「ホスピタリティ論」「メディカル総合演習」「ビジネスインターンシップ」等の科目を通して、即戦力と成り得る医療事務者を育成することについて若干の考察を試みるものである。

12 ○田中加奈子(独立行政法人国立病院機構浜田医療センター)他 常勤医不在の診療科における医師事務作業補助者の役割

当院では2008年4月より医師事務作業補助者(以下医療クラーク)を導入し15対1の施設基準を届出ており、常勤医師1.4人に対し医療クラーク1名の体制で各診療科へ配置している。近年、当院では常勤医確保が困難になっており、28診療科のうち5科はやむを得ず非常勤医師のみの外来診療となり、医療クラークがその診療補助を行っている。これらに関する業務内容と課題について報告する。

13 ○坂田裕介(藤田保健衛生大学大学院保健学研究科) 病院事務職員のキャリア・アンカーに基づく職能支援策 ~企業社員との比較から~ 

DPC/PDPSの導入等により、病院事務職員に新たな職能が求められている。とりわけ大学病院では、教育、研究、診療等の役割が組織に求められていることから、事務職員のキャリア支援策も多岐にわたり、企業組織に学ぶべきことが多いと考える。そこで本研究は、大学病院事務職員のキャリア・アンカーとその開発支援ニーズの関係に注目し、病院事務職員の特性を企業社員との比較によって明らかにしながら、人的資源管理に資する職能開発支援策の知見を得ようとするものである。

14 ○西村久美子(若狭医療福祉専門学校) 医療・福祉専門職に必要な診療報酬知識およびコミュニケーション能力 (発表中止 2013-08-16)

医療福祉の現場が多様化する中で、コメディカルスタッフとして医療機関・福祉施設を支える人材になるためには、専門知識のみに偏ることなく診療報酬や介護報酬の知識を深め、コスト意識を持ち業務に取り組むことも必要である。またさまざまな患者との円滑なコミュニケーション能力、いわゆる接遇能力も非常に重要な資質となるのではないかと考える。本校では医療秘書以外に理学療法士、介護福祉士、保育士等の医療や福祉に携わる人材の育成において、これら導入初期の段階である。先行研究を基に、今後の課題について検討する。

15 ○仁平征次(仁平ビジネス実務教育研究所) 秘書学よりみた医療秘書の名称名称は物事の側面を象徴するものであり、医療秘書、ドクターセクレタリー、ドクタークラーク、医師事務作業補助者など多様医療秘書の名称はそれぞれの側面を表している。本発表では、代表的な医療秘書の名称を、“secretary”と「秘書」の語源、「秘書」の定義、「秘書」と「助手」の関係、PM理論など秘書学研究の手法を用いて分析し、医療秘書や医療秘書教育の本質や問題点などを考える。
16 ○江藤麻奈美(済生会熊本病院医療秘書室) 医療秘書室で新たに取り組んだ業務の報告と今後の展開

当院は2011年10月に電子カルテを導入した。電子カルテ導入に伴い、医師の業務負担が増える中で医療秘書は重要な役割を担うこととなった。診断書作成・診療情報提供書作成・オーダ代行業務等に加えて、2012年4月から新たに取り組んだ業務とその業務を開始するまでの準備や検討事項等について報告し、今後の展開についても述べる。

17 ○直江一彦(国際医療福祉大学大学院修士課程医療福祉学研究科福祉経営専攻診療情報アナリスト養成分野)他 我が国における「医師事務作業補助」の現状~アンケート調査より~

全国の医療機関を対象に2間(施設基準申請病院、未申請病院)で医師事務作業補助者の業務内容などについてのアンケート調査を実施した。その結果を踏まえ、実際におこなわれている業務について報告をする。

18 ○江島有美(医療法人案浦クリニック) 在宅療養支援診療所における医師事務作業補助者の役割と必要性

病院勤務医の過酷な勤務実態を受け、平成20年度の診療報酬改定において、勤務医の事務作業を補助する職員の配置を評価するものとして「医師事務作業補助体制加算」が新設されたが、地域の急性期医療を担う病院のみが対象とされた。しかしながら我が国は今までにない高齢社会を迎え、在宅医療を担う開業医の負担もますます増える傾向にある。在宅療養支援診療所である当院の現状と課題を踏まえ、診療所における医師事務作業補助者の役割と必要性について考える。

19 ○戸田昭直(浜松学院大学現代コミュニケーション学部) 医療機関におけるゲートキーパーのコミュニケーション

近年、ゲートキーパーの役割が注目されている。平成23年、国内の自殺者数は28,896人(厚生労働省)にのぼる。ゲートキーパーの役割は、多くの医療従事者の方々にとって”目指すべき医療とはなんなのか”を考えるときに参考になるばかりか、その役割を理解し、日々のコミュニケーションに生かすことが医療秘書の専門性を高めることになる。発表では、医療機関におけるゲートキーパーのコミュニケーション、研修方法を紹介する。

20 ○鈴木清隆(医療法人社団善仁会小山記念病院) ホスピタリティによる小山記念病院ブランド化の取り組み

善仁会グループは、グループの理念「伝統と誇り幸せを創造し未来へ」、社是の「仁」、スローガンの「善仁会一心」を具現化するため、医療・福祉・給食事業に努め、皆に愛されるグループブランド化の確立を目指している。ブランド化を確立を目指している。ブランド化を確立するためには、ホスピタリティ(接遇、おもてなし)が重要であると考える。そして、このホスピタリティのさらなる向上を目指すために、院内組織を中心にホスピタリティ向上計画に取り組んでいる。今回は、当院のホスピタリティ向上に向けての取り組みを報告する。

21 ○片山友子(滋賀短期大学ビジネスコミュニケーション学科) 滋賀短期大学における医療秘書資格に寄せる学生の関心 (タイトル一部修正)

滋賀短期大学ビジネスコミュニン学科ホスピタリティビジネスコースは、コース開設以来導入してきた医療秘書および医療事務系資格に替わって、2つの医療秘書の資格を平成24年度より導入した。これら資格取得のためのカリキュラム編成と資格取得への学生の関心についての現状を報告する。また、心理検査を行い、資格の種類により取得希望者を群分けし、心理検査の結果から群別の特徴を分析した。

22 ○中村則子(川崎医療福祉大学大学院修士課程医療秘書学専攻) 病棟における事務職の実態に関する研究 -全国実態調査から-

病棟事務職の実態に関しては、医師事務作業補助者の導入の効果という側面から病院単位の報告はあるが、全国的な規模での調査はなされていない。本研究では、全国の病院の病棟事務職員と事務部門の長に対して、質問紙による実態調査を実施した。病棟において事務を行ううえで必要な資質などを明らかにすることが目的である。今回は、その調査結果から事務部門の長より得た回答結果を分析し、考察する。

23 ○野田真喜子(名古屋大学医学部医学系研究科医療業務支援課医療支援掛) 問診聞き取りとその代行入力の事例報告

診察前に行う医師事務作業補助者による眼科、整形外科、CKD(慢性腎臓病)外来初診患者に対する問診業務。問診票を記入してもらい記入内容を確認しながら質問をし診察時に必要な情報収集をし、その聞き取り内容と紹介状要約をカルテ内に合わせて代行入力しておくことで医師の初診患者の診察時間の短縮と診察時の情報入力量の負担軽減を図ることができ医師の負担軽減をはかれている当院の事例報告。情報収集としての問診聞き取り業務には医療的な知識に基づく情報の取捨選択、カルテ内に単純で明確に書き込む文章力、コミュニケーション力、とホスピタリティが必要とされる。

24 ○本田あずさ(済生会熊本病院医療秘書室) 当院のがん登録業務内容と今後の課題

当院は2007年1月をReference Dateに設定し、腫瘍登録士による院内・地域がん登録を開始した。初年は1300件だった登録数も近年の年間平均は1700件となった。また、併せて熊本県内の拠点病院と協力し、予後調査を行っている。臓器別がん登録に関しては、2013年1月より消化器外科の手術症例から開始した。発足当時から現在に至るまでの業務報告と今後の課題について検討する。

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